Gibson 【MIII / ギブソン / HHH】

エレキギター

1990年代初頭は、ギターのデザインが急激に変化していった時代でした。

1980年代は60年代や70年代のクラシックなデザインは廃れ、それに取って代わりいわゆる「速弾き専用ギター」が現れはじめました。

かつてギタリストたちが求めていたのは、エレガントなカーヴド・メイプル・トップとフィックスド・ブリッジでしたが、80年代の典型的なギタリストたちは、高出力のハムバッカー、フロイドローズ・トレモロ、24フレット、そして派手さを求める様になりました。

Guns N’ RosesのSlashは、「Appetite For Destruction」のヒットした後にはストラップを長くし低めにかまえたギブソン・レスポールで名を馳せましたが、殆どはデイグロー・フィニッシュと先の尖ったカーブのギターを使用する事が多かったのです。

90年代初頭それは一変し1992年の終わりには、突然速弾きが無くなり80年代のハードロックは廃れていきました。

そして80年代ハードロックのアイコンであった「速弾き専用ギター」が無くなっていきました。

プレイヤーたちは、それに取って代る美学に沿ったヴィンテージ・ギター、あるいは少なくともレトロなスタイルのギターを求めていく様になりました。

細いネック、高出力ピックアップ、ワミーバー、リバースヘッドストックなどはトレンドでは無くなりました。

その結果、革新的なギターが採用されることは無くなり、Gibson M-IIIはその流れを経てデザインされたギターでした。

10年に及ぶ試行錯誤を経て、90年代初頭にはギタリストもギターメーカーも、ハードロック志向のギターデザインを知り尽くしていました。

1991年に発表されたGibson M-IIIは、ダブルカッタウェイの洗練された楽器で、レスポール・スタイルのボリュームとトーン・ノブ、リバース・エクスプローラー・タイプのヘッドストックを除いては、驚くほどGibsonらしいギターではありませんでした。

スタンダードとデラックスモデルには、シャラー製のフロイドローズ・トレモロが搭載され、H-S-H(ハムバッカー/シングルコイル/ハムバッカー)のピックアップ・レイアウトに、5ウェイ・ブレード・スイッチと2ウェイ・トグルが組み合わされ、ハムバッカーとシングルコイルの両方の音が出せるようになっていました。

ピックアップは、フロントに496R、リアに500T、センターにNSXシングルコイルが採用されています。

2ウェイ・スイッチを片方に倒すとハムバッカー・サウンド、もう片方に倒すとシングル・コイルを選択することができます。

スタンバイモードやキルスイッチの効果を得られる機能とフロントピックアップの音を強調する機能を含む合計9種類のサウンドを選択可能です。

このギブソンらしくないギブソンを容易に使いこなせるようにする為に、ピックアップのレイアウトは直感的に理解できるように配慮されたデザインとなっています。

特に興味深いのは「ゼブラ」と呼ばれるピックアップの配色でした。それぞれのハムバッカーの白いコイルと白いシングルコイルは、このギターがツインハムバッカーだけでなく、伝統的な3ピックアップのシングルコイルサウンドにも対応していることを視覚的にも示しています。

1991年に掲載された広告では、M-IIIのスリムテーパー・ネックを「宇宙人ではなく、あなたの手に合わせた形状」と紹介されています。

1-14/32インチ幅のネック(ボルトオンネックではなく、セットインネック)には、24本のジャンボフレット、矢じり型のオフセットインレイ、メイプル指板が採用されています。

ネックは22フレットでボディに接合されているため、アッパーフレットへのアクセスが非常に良く、今でもネットでは、M-IIIのネックがとても弾きやすいと言う多くのプレーヤーの意見を見ることができます。

1992年2月のGuitar World誌では、クリス・バトラーがM-III Standardをレビューしていて、「この楽器の唯一の欠点は弾くのに夢中になってしまい、レコーディングに集中できずにいたずらに弾きまくってしまうことだ」と述べています。

M-IIIのスタンダードとデラックスには、高音部と低音部のカッタウェイが作る三日月型の弧に沿って、タイガーストライプのような独特の形状のトーティシェル・ピックガードが装着されています。(実はこのピックガード、目を凝らすとエクスプローラーのボディを逆さにしたようにも見えます。)

このピックガードと同様に、トラスロッドカバーとトグルスイッチの周りにもべっ甲が使用されています。

カラーはエボニー、ホワイト、キャンディアップルレッドの3色(スタンダード)と、マホガニーボディの良さが引き立つクリアー仕上げ(デラックス)がありました。

他にはリアルーテッド(ピックガードがない)、ピックアップレイアウトの違い(シングルコイルではなくハムバッカーのペア)、トレモロの違い(スタインバーガー)、木材や製造方法の違い(ネックスルーモデルが製造されたが、ボルトオンモデルがわずかに残っているという未確認情報)などがあります。

革新的なスイッチングシステムとピックアップレイアウトは、レスポールの一部のモデルにも採用され、エピフォンではEM-2 Rebel(1991年〜1998年)というモデルが作られ、1999年にはM-IIIのボディシェイプにインスパイアされたベースが発売されました。

一方、M-IIIは1996年まで様々な形でギブソンのカタログに掲載されており、現在ではエピフォンのプロフェシーシリーズのEM-2 EXとEM-2 FXの2本のギターにボディシェイプが受け継がれています(EM-1は2010年に販売終了)。

ロキシー・ブルーのシド・フレッチャーは、このギターをシングル「Rob The Cradle」のビデオで使用し、1992年にはギブソンの広告キャンペーンにも登場しています。

Roxy Blue – Rob The Cradle (1992, Enhanced)

そしてM-IIIは、スイスアーミーナイフのような音色の柔軟性を持つ高性能な楽器を必要とする一般のプレイヤーに購入され、愛されました。

ギブソンは2010年代前半にM-IIIを復活させましたが、ミニトグルやピックガードなど、オリジナルのM-IIIの特徴であった多くの要素を取り除いた、簡素なデザインでした。演奏するのは楽しいギターですが、やはり同じではありません。

オリジナルのM-IIIとその風変わりな奇抜さに乾杯!

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