【DAW / DTM レッスン】ヒップホップ・ビートのミックスの仕方 | Waves LoAirとEQの使い方 | Leslie Brathwaite (Pharrell Williams)

DAW / DTM / 作曲

はじめに

このレッスンでは、Beyonce、Pharrell Williams、Jay-Z、Cardi Bをはじめとするビッグネーム・アーティストのエンジニアとして活躍している、Leslie Brathwaiteの動画を紹介します。大変貴重なミックスに対する考え方や実際に行っている方法を解説しています。

Pharrell WilliamsがプロデュースしたLil Uzi Vertの「Neon Guts」

今回のLAでPharrell Williamsがプロデュースした「Neon Guts」のレコーディングでは、彼と作業する為にLil Uzi Vertは実際にLAに出向きました。Pharrellはプロダクションに多くの楽器を使う事はなく非常にミニマルなアプローチをとります。

私はまずフェーダーを動かしたり何かを触ったりする前に、彼らがどのような雰囲気や考えを持っているかを確認します。何故ならば彼らが曲を気に入り、特定の空間やヴァイブに入っていける様にする為です。そして私がミックスするに値する物だと感じる必要がありました。私のアプローチは、彼らが築いてきた関係の上に構築するというものです。(音楽)

How to Mix Hip Hop Beats | Leslie Brathwaite (Pharrell Williams)

Waves LoAirを808に使用する。

今日のヒップホップの影響を受けたポップミュージックでは808(解説1)の音が我々の文化の非常に重要な部分を占めています。一般的には楽器の間に聞こえてくる駆動力です。例えば808の場合、まず最低音域のアクセントを調整できるプラグインを使います。

私のお気に入りの一つは、LoAir(解説2)です。低音を整え、丸さと厚みを与えます。また曲の音にもよりますが、808を紙の様に薄い音にしたい時もあります。キックの後ろで鳴っているパタパタとした音にします。そこから、SSL EQの様に殆どの低域やさらに低い低域を調整する事ができます。その昔、私がいつもSSLを使っていた時の様に。だから、WAVESが私の様な実機で育った人間の為に多くのプラグインを開発してくれたのは素晴らしいことだと思います。EチャンネルのSSL Wavesプラグイン(解説3)を引き出せるのは、これまでで一番素晴らしいことだと思います。

クラップに関しても同じで、それほど音を加工しませんでした。私は非常にミニマリスティックなアプローチでEQなどのプラグイン、そしてミックスを行います。特にドラムについては、バスドラム、808、クラップ、そして8bitのハイハットの4つの楽器が良い関係性を築き、良いグルーブを得て、しっくりくる事が重要です。時にはLoAirで808やキックに低音を加えます。

解説1:ここで言う808とは、ローランドから1980年に発売されたTR-808と呼ばれるリズムマシンに入っている極太のバスドラムの音の事で、現在ではトラップ音楽などでベースパートとして使用されている。1983年に製造が中止されてしまったが、2020年にTR-808の音色が再現されているTR-6Sというリズムマシンの発売を開始した。

解説2:Wave LoAirとはWaves社が開発したプラグインで、ベースやキックの音を太くする事ができる。多くの音を太くするプラグインは倍音を付加して低音を強調する物が多いが、LoAirは原音の1オクターブ下の音を生成し、音に非常に深い奥行きとレンジを持たせる事ができる。


解説3:Waves SSL E-ChannelとはWaves社が同名の実機を元に開発したプラグインで、多機能かつ直感的な操作が可能となっている。効き方も良く、多彩な音作りができる。


Waves PuigTech EQをキックに使用する。

音楽の流れや感じ方を把握した後、ボーカルとドラムの音を一緒に聴いてみて、「ああ、ここにPuigTech EQ(解説4)を使う必要があるかもしれないな」と判断します。キックの音を少し上げてみるとか。ヴォーカルに合わせてドラムやその他の楽器を演奏し、自分が何をすべきかを考えます。聴いてみて、そこから始めてみましょう。(音楽)

How to Mix Hip Hop Beats | Leslie Brathwaite (Pharrell Williams)

Pharrellのトラックの素晴らしいところは、彼がとてもミニマリストであるため、ボーカルに影響を与えず、邪魔にならないように周波数を調整する余地がたくさんあることです。例えばここでは、キックにもう少し「ドン」という低音を与えたいと思います。PuigTecの60Hzあたりをブーストし始め、思ったところで止め、私がどの様に感じるか確かめます。そして計画通りに曲全体として上手く機能しているかどうか確かめます。(音楽)

解説4:Waves PuigTecはWaves社がPultechという実機を元に開発されたEQプラグイン。同じ帯域に対してブーストとカットが同時にできるという特徴を持つ。真空管が採用されている実機みたいに、サチュレーションが効きくので通すだけでも音が太くなる。


How to Mix Hip Hop Beats | Leslie Brathwaite (Pharrell Williams)

EQを使い低域を持ち上げる方法

多くの場合、私はプラグインのパラメータを最初に強く押し出して、とんでもない歪みが生じるところまで持っていきます。そして、パラメーターを戻していき、その時に何が意味を持ち始めるかを確認します。少しずつ足していくのではなく一気に持ち上げてみます。そして、何かを加えているつもりでも、何も加えていないかもしれません。

耳がいたずらをして、「そうだ、何かをしたんだ」と感じさせてしまうかもしれません。そのため、多くの場合、最初極端なことをして、本当に効果があるのかどうかを確認してから、それを戻して、どこからがいい感じなのかを確認していきます。そこから、ドラムとボーカルの良いバランスを探していきます。

一つ、いつも注意しなければならない点はスネアです。この場合はクラップです。また、クラップやスネアがボーカルを圧倒するようなことはありません。そして、何が起こっているのかを正確に把握する必要があります。この場合はトラックの数が少ないため、私はこの問題に直面していません。そのため、ドラムとの位置関係を把握しやすく、2つの要素の間でケンカをすることもなく、自然に調和しています。

ARPとヴァイブの処理の方法

ミックスのこの部分では音楽とその楽器についての話をしていきましょう。この曲では、ARP(解説5)、いくつかの鍵盤、ヴァイブ(鉄琴)が使われています。これらは、曲の中のグルーブ感のある雰囲気のある低中音域から中音域で、曲の主要部分となります。多くの場合はミックスエンジニアやレコーディングエンジニアは70Hzあたりの低音域をカットしています

最低域の音や一般的なミックスでは、トラックの上にトラックを重ねていくと、全体の音が少しずつ濁っていくことがよくあります。このように、複数のトラックで低音域をカットすることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。低域をカットした鍵盤のトラックをソロで聴いてみましょう。なぜなら、そこにある多くの濁った周波数は、最低音域のフィールよりも実際に演奏されている音の方が重要だからです。そのため、音をしっかりと出すためには、ある程度低域をカットしても構わないのです。

そして、ヴァイブ(鉄琴)があります。これらの周波数を追加していく際には、音を濁らない様にしなければなりません。もし、ブレンドされた音の整合性を保ちたいのであれば、もっと徹底的な方法をとる事もできます。まず鍵盤、ヴァイブ、そしてARPをソロで聴いてみましょう。そして、グループトラックの低音域をカットしていきます。

ここではQ10を使用します。70Hz(解説6)あたりの低音域をさらにカットして、音をクリアにし、ブライトに保ちます。Pharrellは、自分のミックスを気に入ってくれていて、明るさや軽さを残しながら808を太くそしてキックが効いた感じにしたいと言っていました。この様な曲ではハッピーなコードやフィール、「Neon Guts」があります。Pharrellはその明るさを欲しがっていました。この課題と全体的な規模を解決するために、これらのツールを選択しました。(音楽)

解説5:ARPとはAlan Robert Pearlmanによって1969年に設立したARP instruments社のシンセサイザーの事である。現在ではArturia社がARPの音をソフトシンセで再現している。


解説6:70Hzあたりはいわゆる重低音と呼ばれる帯域で、少ないとベースやキックがクリアになる一方で太さがなくなり、反対に多すぎると音が濁ってくる。

Waves LoAirとEQを同時に使用する

このようなサウンドでLo Airを使用する理由は、このような本当に濁った小さな音を確実に聞き取り、感じ取ることができるようにするためです。このローカットされたトラックが取り残されない様にする為です。そして、LoAirを使います。両方同時(解説7)に使用し、その両方のプラグインのバランスをとります。

LoAirを入れました。そして、ここを少しカットして、ここはあまりカットしないなど、どうしたいのか自分自身に言い聞かせるように処理していきます。場合によってはもう少しパンチを加えて、音を感じたり、音のつかみ方を感じたりしてみます。二つの低音域をいじくりまわし、どの様な特定のサウンドを欲しているのかを探っていきます。これがこのRhodes(解説8)を攻略する方法です。先ほど言ったように、MIDIの低音を生かしつつ、明るさと存在感を出したいのです。

LoAirを一旦バイパスし、まず聴いてみて自分が聴きたい事が達成できているかどうかを確認します。そしてLoAirをアクティブにして聴いてみます。瞬時に低域のとても濁った周波数が聞こえてきます。今度はRenaissance Equalizer(解説9)バイパスしてどう感じるか見てみましょう。ここの少しヒリヒリするような最高域の倍音を良く聴こえる様にいくらか持ち上げてみましょう。

どちらも良く機能していますね。多くの場合、あなたがどのように使用したいかという特定の決まった方法が重要になりますが、またLoAirの使い方も、EQの使い方も一概には言えません。どんなレコードでも、どんなミックスでも、すべてが一体となって、音楽があなたを感じさせるようにするにはどうしたらいいか、という観点からアプローチすることが何よりも重要なのです。(音楽)

解説7:EQでローエンドをカットしてクリアにしつつ、LoAirで太さを足していく。二つのプラグインでバランスをとり、イメージしている音に近づけていく。

解説8:RhodesとはRhodes Piano(ローズ・ピアノ)の事で、Harold Rhodesによって1940年に発明されたエレクトリック・ピアノである。70年代よりジャズ、ソウル、ロックなどで重宝されアイコニックなサウンドとなった。現在ではWaves社がRhodes Pianoの音をソフトシンセで再現している。


解説9:Renaissance EqualizerとはWaves社が開発したEQプラグインで、音楽的でアナログなサウンドが追求されている。ブーストしても不自然になりにくく、非常に音楽的なかかり方をするWaves全製品でも屈指の人気を誇るプラグインである。


コメント

PAGE TOP